女性のための いちばんやさしい遺言書の書き方
女性のための いちばんやさしい遺言書の書き方
「終活」という言葉は、すっかりお馴染みとなりました。自分もそろそろ、と思うけれど、何から始めたらいいのか、何をするべきなのかがわからない……という人は少なくないのではないでしょうか。あるいは、周囲の人たちを見ても終活の必要性はよくわかるけれど、自分の最期=死をイメージしてしまって何となく気が進まない、という人もいるかもしれません。
でも、終活をすると、やるべきことをこなしていくほど気持ちが明るくなり、前向きに日々を過ごせるようになると考えてはいかがでしょう。老後に対する漠然とした不安が解消され、「今、生きているこの瞬間」を楽しむことができます。実はそれが、最期への最善の備えなのかもしれません。
2018年9月。名優・樹木希林さんがお亡くなりになりました。そのとき、注目されたのが希林さんの相続術です。
希林さんは、都内に8つの不動産を持ち、その渡し方を遺言書に残すことで、子どもたちへの負担を減らそうとされていました。その内容を知れば知るほど「これぞ見事な備え」「相続上級者」と感服します。
希林さんの相続術がいかに優れたものか、要点をまとめると次のようになります。
●娘婿を養子にしていた
希林さんは生前、娘婿を養子にしていた。それによって相続人が1人増えると相続税の基礎控除が増え、相続税の節税にもなる。娘1人で親の財産を抱えるよりも2人で分けたほうが支えやすくなる。
●財産の大部分を不動産にしていた
相続評価は半分以下となり、特例を使えるメリットが作れる。
●自宅は子ども世帯と同居していた
小規模宅地等の特例を使える。
●もとの住まいは賃貸で貸していた
不動産は現金と違って評価が下がり、特例を使える。また、賃貸すれば安定した家賃収入が入るようになり、将来の不安が減る。
●不動産を孫に贈与していた
早めに財産を渡すことで、節税になる。
●公正証書遺言を作成し、財産は子どもに残した
財産の渡し方をあらかじめ決めておくことで手続きが早くでき、もめごとを回避できた。
夫である内田裕也さんには、遺言書によって希林さんの財産は一切相続させていない可能性があります。実際、希林さんは「私が死んでも、夫に財産は残さない」と宣言していたそうです。内田さんに遺産の一部でも渡してしまえば、子どもと一緒に相続税申告をするため、希林さんの遺産のすべても内田さんが把握できてしまうでしょう。そうなると、財産の半分は相続すると主張でき、娘夫婦とトラブルになるかもしれません。
そのような事態を避けるために、希林さんは生前に遺言書を作成していたようです。亡くなった後、残された不動産はひとり娘の也哉子さんや娘婿(俳優の本木雅弘さん)の名義に書き換えられたようです。そして、内田さんには希林さんが所有するマンションに住んでもらい、娘夫婦に生活の保障をしてもらうというのが、遺言の趣旨だったように思えます。
その相続術もさることながら、生前にきちんと遺言を作っていたことは、さすがとしか言いようがありません。
希林さんの財産は10億円以上と言われ、一般家庭からはかけ離れていますが、相続の内容や遺言書を作成していたことは、どなたにも参考になることでしょう。希林さんがそう願って作成していたように、遺言書というのは、愛する家族が安心して過ごせるようにするためのもの、さらに、自分らしい生き方を最期まで貫くためのもの、と言ってもいいかもしれません。
遺言書は、財産の多い、少ないに関わらず、残された人たちに自分の思いを伝え、託すためのものです。そう考えると、「書いてみようかな」という気持ちになりませんか?
遺言書にはいくつかの厳密な決まりごとがあり、専門用語も多く使われますが、基本的には「自分の意思を記すもの」ですから、案外、自由な部分も少なくはありません。詳しくは本文で述べますが、気が変わったら書き直すこともできるのです。
ぜひ、自分の終活のストーリーを考えながら、遺言書を書いてみてください。本書では、自分で書き、押印して作成する「自筆証書遺言書」を中心に、遺言書を書くことのメリットと遺言書の書き方について説明します。最後に自筆証書遺言書の下書き用紙を用意しましたので、本書を読み返しながら、書き始めてみましょう。
曽根恵子 曽根恵子
縦:25.7×横:18.2 全頁数:96ページ
厚さ0.8cm
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