女性の劣化をくいとめる ちつのケア
女性の劣化をくいとめる ちつのケア
ちょっと冒険的で、挑戦的な本になってしまいました。でも今必要な本ができたと思っています。
第2次世界大戦前の女性の平均寿命は50歳を下回っていました。多くの人が閉経後の人生を考えなくてもよかったのです。しかし今や、女性は100歳近くまで生きるようになりました。
それなのに、日本ではまだ、50歳以上の女性は社会的に“女性”と思われない時代が続いています。それは第2次世界大戦直後も、私が医師になった30年前も、そして今も、男性の感性を基準に社会がまわっているからです。例えば中高年女性向けの商品の宣伝なのに、20~30代の女性が上目使いで笑っている写真が使われていることがあります。50歳以上の女性は、“女性”ではないというイメージは、そこここにはびこっています。女性自身でさえ、50歳を過ぎると自分はもう女性ではないと思わされている人もいます。しかし女性はいくつになっても女性です。なぜならば、“ちつ”をもっているからです。
現在の女性にとって50歳は、人生の折り返し点でしかありません。人によって寿命は異なりますが、10~50年もあれば、したいと思っていたことを目標にして、それを実現することが可能です。年齢にとらわれない清々しく美しい女性が、私のまわりにはたくさんいます。現代はだれでも、生涯、キレイにしなやかに、女性としての自分の人生を楽しむことができると私は考えています。その一助になるのが「ちつケア」です。
私の生まれてからの50年間は、とても予期不安(将来に対する漠然とした不安)が大きく、生きるのが大変な時期でした。これが女性ホルモンの分泌量とその変動に大きな原因があったのだと認識できたのは、閉経してからです。しかし女性ホルモンの変動による大きな予期不安なしには、結婚や出産・育児などの人間の“個”としてはどう考えても損なことを、多くの女性が自らすすんでするのは難しいと思います。言わば生物として生殖に縛られていたのです。
一方、50歳からの50年間は、女性にとって生殖を終了し、月経のトラブルから解放され、自由を謳歌できる楽しい時期です。
この楽しい時期を健康に過ごすために、まずは癌死しないために、癌検診の習慣をつけましょう。さらに脳血管障害・心臓病等を発症させる動脈硬化を進行させないために生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症)を予防・治療する必要があります。さらに痛みなく動ける肉体を維持するために、骨密度管理と全身の筋肉運動が必要です。
つまりエイジングケアに必要な要件とは、(1)血管を守る、(2)骨を守る、(3)うつ状態にならないように気をつける、(4)皮膚の老化を防ぐ、(5)筋肉量を維持する、(6)癌を早期に発見することです。
さらに女性のラスト30年を楽しく過ごすための、最後の重要な要件が下半身の強化です。人間の胴体の一番底は、骨盤底というプレートで支えられています。この骨盤底は、骨盤底筋群や靭帯・筋膜などで構成されていて、内臓を支えるとともに排尿や排便などの排泄の機能を担っています。骨盤底筋は全身の筋肉のうち、近年、注目度が高まってきている重要な筋肉です。
また最近は、女性器の粘膜や皮膚・皮下組織は性ホルモン低下で劣化し、陰部の違和感や尿トラブル、性交痛などが起こり、女性の生活の質をとても落とすことがわかってきました。これはGSM(閉経関連尿路生殖器症候群)と呼ばれるようになってきています。
骨盤底と腟・外陰部のセルフケアの習慣は、生理がはじまった頃から継続したほうがいい、女性の新しい常識です。この本でぜひ知識を吸収してください。
最後にこの本では、セックスに関しても少し触れていますが、女性が何歳であっても、セックスしたいと思いセックスするのも、セックスしたくないと思いセックスをしないのも、個々の女性の自由であるということを強調したいと思います。 (「はじめに」より)
著者:関口由紀
縦:21×横:14.8 全頁数:128ページ
重量170g厚さ0.8cm
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