「老け手」解消! 手・腕に浮き出る血管はこうして改善する
「老け手」解消! 手・腕に浮き出る血管はこうして改善する
「手の甲の血管がボコボコと目立ってきて、人に見られるのが恥ずかしい」
「腕の血管が気になって、夏でも半袖が着られない」
「血管の目立つ“老け手”がイヤで、外出するのもおっくう」
このように、手や腕に浮き出る血管で悩んでいる方が、決して少なくありません。周りの人に相談しても「気にしすぎなのでは?」「年だから仕方ない」といった言葉で片づけられ、これといった対策も見つけられないまま、欝々とした日々を送っている方も多いのではないでしょうか?
手の甲や腕に血管が浮き出てくるのは、「ハンドベイン」と呼ばれる現象です。病気を心配される方がいますが、病的なものは稀で、ほとんどは加齢などによって起こる生理的な変化です。基本的には、放っておいて問題ありません。
しかし、気になる方にとってはかなりのストレスで、東京・北青山にある私のクリニックには、遠方からも治療を受けに来られる方がいます。
ハンドベインの治療を希望して当院を訪れる方の大半は女性ですが、男性もいらっしゃいます。「腕を出す仕事なので気になる」「孫に気持ち悪がられて悩んでいる」など理由はさまざまですが、男女を問わず、どなたもとても切実に悩んでおられるところが共通しています。
当院でハンドベインの治療を始めたのは、2007年のことです。ある患者さんからの強い要望がきっかけでした。
その頃、当院では、日本ではまだ確立されていなかった下肢静脈瘤(足の静脈瘤)に対する日帰りの血管内レーザー治療が口コミなどで話題となり、治療に追われる日々を送っていました。
そんなある日、ピアニストの方から「手に浮き出た血管が気になるので、血管内レーザー治療で治してもらえないでしょうか?」という相談を受けたのです。正直なところ、私はかなり戸惑いました。
手や腕の静脈の拡張は、下肢静脈瘤と違って病気ではないので、治療対象として考えたことがありませんでした。痛みやしびれなどの症状が出ているならともかく、見た目が気になるという理由で医療行為を行うことには、やはり抵抗感がありました。そのため、最初はお断りしたのです。
ところが数カ月経って、その方が再び来院され、「どうしてもお願いしたいのです」と相談を受けました。私がお断りしたあと、治療できるところをあちこち探されたようでしたが、結局見つからず、困り果ててもう一度、私のところへ来られたということでした。お話を聞くうちに、その方にとって手の血管のふくらみがいかに大きなストレスになっているのかを痛感しました。そこで、実際に治療を行うかどうかはいったん保留し、手の静脈の治療について調べてみることにしました。
国内外の文献を調査したところ、アメリカでは手や腕の静脈が浮き出る症状を「ハンドベイン(hand〈手〉+vein〈静脈〉)」と呼び、複数の医療機関で治療例が報告されていることがわかりました。さっそく、その中の数人の医師に連絡をとり、納得のいくまで説明を受けた結果、安全性については問題がないとの情報が得られました。
これなら大丈夫だと確信し、ピアニストの方に来ていただいてインフォームドコンセント(医師が患者さんに病状・治療方針を充分に説明し、患者さんが納得・同意してから治療を進めるという診療原則)を行いました。アメリカの治療例を見る限り、治療によるリスクは低いこと、ただし私自身に治療経験がなく、エビデンスも充分に揃っているわけではないことから、想定外の事象が生じる可能性が否定できないことを伝えました。すると、「それでも構いません」ということでしたので、治療を行うことにしたのです。
決して無謀だったわけではありません。下肢静脈瘤の治療法を、手の静脈の治療に応用することは、大学病院在籍中から血管外科を専門としてきた私にとって、技術的にそれほど難しいものではありませんでした。丁寧に治療を行えば、大きなトラブルが起こる心配もないという確信はありました。
ただし、初めての手術が、ピアニストの方の手ということで、より慎重に治療を行ったことは事実です。治療後に少しでも手や指に違和感が生じるようなことがあれば、ピアニスト生命に関わるからです。
結果は大成功でした。手の甲にボコボコと浮き出ていた血管が目立たなくなり、治療後の手の動きにもまったく支障がなく、とても喜んでいただけました。
それでも、このあとしばらくは、ハンドベインの治療を積極的には行っていませんでした。ハンドベインで深く悩んで相談に来られた方だけを対象に、細々と続けていた感じです。しかし、治療を続けるうちに、ハンドベインを解消することで、患者さんたちの幸福感が向上したり、精神面が安定したりする様子を何度も目の当たりにし、私の意識が少しずつ変わっていきました。
当院には、ハンドベインに限らず、さまざまな症状の方が来院されます。どのような患者さんも、多かれ少なかれ「心の問題」を抱えておられることは、以前から理解していました。時には心理的要因がきっかけで病状が進むこともあります。
ですから、精神的な側面や心理的な部分をサポートすることも、医療行為として非常に意義があると思っていました。そして、まさにハンドベインの治療がそれに該当することに、患者さんたちの変化を見て気がついたのです。
ハンドベインは医学的には問題のない症状ですが、治療を行って手の甲や腕がきれいになると、みなさん輝くような笑顔になり、その後の人生が一変する方もいらっしゃいます。そして、それが結果的に、心身によい影響を及ぼすことも珍しくありません。つまり、ハンドベインの治療は審美的な側面のみならず、間接的に健康の増進や生きがいの創出にもつながる可能性があるということです。
そのことに気づいてから、ハンドベインの治療を、医師である自分の大切な使命のひとつと考えるようになりました。
病気ではなくても、ほかの医療機関で対応してもらえない症状に悩んでいる方たちに対して、自分の持っている知識と経験、技術がお役に立ち、喜んでいただけるのであれば、私としても非常に充実感があります。なにより、患者さんの笑顔を見ると、私もとてもうれしくなります。
2010年からは、ハンドベインの治療に関する情報を公開するようになりました。一人でも多くのハンドベインに悩んでいる方たちに、解決する方法があることを伝えたいと思ったからです。
超高齢社会となったわが国の現状を考えると、これからの医療は病気を治すだけでなく、病気を予防し、加齢による衰えを改善することに、医学的な知識や経験、技術を駆使することが、とても大切だと私は考えています。一般に「予防医療」「アンチエイジング医療」と呼ばれるものです。
ただし、「予防医療」「アンチエイジング医療」においては、私たち医療者はあくまで脇役です。もちろん、相談を受ければ全力でサポートしますが、みなさん自身が自ら積極的に取り組んでいく意識が大切なのです。ハンドベインの改善・予防も同様です。
本書では、ハンドベインの症状や原因、治療法に加えて、家庭でできる改善法・予防法、さらには静脈を健康に保つ生活習慣など、自分で簡単に実践できるハンドベイン対策についても紹介しています。
本書の内容が、手や腕に浮き出た血管に悩んでいる方、あるいはそれを改善・予防したいと考えている方たちの笑顔につながる一助となれば、本当にうれしく思います。 (「はじめに」より)
著者:阿保義久
縦:25.7×横:18.2 全頁数:128ページ
重量292g厚さ0.9cm
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