美しさに差が出る! 一枚上手のバラの咲かせ方
美しさに差が出る! 一枚上手のバラの咲かせ方
私がいちばん好きなバラは、「ヴィルゴ(Virgo)」です。小ぶりのHT(ハイブリッドティー)種・白色花で、花数の多い品種です。
ヴィルゴは枝が細く、花の重みで曲がってしまうことがあります。また、病気にかかりやすく、軟質の花弁は雨で傷みやすい。香りはほとんどなく、花もちも悪く、すぐに満開になってしまう……と、どちらかというと欠点ばかりが目立つのですが、年に1回くらいは、すばらしい良花を見せてくれます。形の良い長蕾からゆるやかに咲きはじめ、七分咲きになる頃が最高です。穢れのない純白の花は、ヴィルゴ=「おとめ座」の名にふさわしい雰囲気で、周りを包み込んでくれます。
たくさんあるバラの中で、なぜヴィルゴ、なぜ白花なのか?
バラは、アサガオのような空色以外、ほとんどの花色が揃っています。ちなみにダリアには、バラ以上の花色があります。江戸時代に九州熊本藩で栽培が盛んになり、その品種は門外不出とまで言われて保護された肥後花菖蒲。バラにはない青紫系の花色が特長ですが、目指す究極の花色は、穢れのない白色です。アメリカの国花はバラですが、最後までその地位を競ったマリーゴールドには白花がなく、その作出には莫大な懸賞金がかけられたほどです。多くの花色に囲まれた花好きの人や園芸愛好家にとって究極の花色――それが白色なのかもしれません。
花好きの人や園芸愛好家へのアンケート調査では、好きな花の第一位は、いつもバラです。母の日のプレゼントも今は、カーネーションからバラに代わりつつあります。
ところが、好きなのと栽培するのとでは、ちょっと事情が違うようです。バラ栽培の場合、やれ「虫が」「病気が」といったネガティブな先入観があるようですが、たしかにそれは本当です。どうやらバラは、その美しい花だけでなく、枝葉までもが、病虫にとってごちそうのようです。実際、バラの仲間であるバラ科には、リンゴ、ナシ、モモ、イチゴなど、おいしい果実をつけるものが多くあり、バラの実であるローズヒップにはビタミンCが多く含まれ、虫や鳥たちだけでなく、人間にとっても有用な果実のひとつです。
一般的なバラの栽培書には、肥料のこと、病虫害への薬剤のことなどが詳しく書かれています。バラ愛好家の方々は、それらのことが気になって頭から離れません。その結果、肥料を次々と与え、1匹の虫や少々の病害に「これでもか」と薬剤を浴びせかけています。私の園芸教室でも、「どの肥料が、どの薬剤が効果的か」という質問が絶えません。
しかし、バラ栽培の根本は、身近で育てて美しい花や香りを感じ、心も身体も癒やされることではなかったでしょうか? それがいつしか、少しばかりの病害虫を気にして、かえって大きなストレスになっている――バラ愛好家の方々を見ていると、そんな気がしてなりません。
大丈夫です。バラはもともと強健です。少しくらいの病害虫で枯れてしまうようなことはありません。
花や葉に取りついて穴だらけにしてしまう、にっくき虫たち。実が熟すやいなやついばんでしまう小鳥。若葉に取りつき妖しくうごめく病菌。これらもみな、小さな命であり、一所懸命生きています。人間たるもの、大らかな気持ちで少しくらいおすそ分けをしてあげましょう。そして、そんな病虫害に遭ってもなお、健気に美しく咲いてくれるバラに、最大級の賛辞を与えてあげましょう。バラ栽培の目的は、バラだけを立派に育てることではないはずです。
バラは植物ですから、「何も言っていない」と皆さんは思っていませんか? 実はバラは、多様な言葉で皆さんに語りかけているのです。よく耳を傾けてみると、「土が固くて、根が伸びないよ」「虫を何とかして~」「水や肥料はもういらない!」「ちょっと暑い……」など、さまざまな声が聞こえてくるはずです。
ところで、バラがいちばんよく言っているのは、どんなことだと思いますか? それは、「少し放っておいて」「かまいすぎないで」です。バラは、みなさんが思っている以上に、たくましいのです。
ちょっと手助けしてあげるだけで、バラは元気な良花を咲かせてくれます。本書でそのコツをつかみ、“おせっかい”にならない程度に、バラとうまく付き合ってください。 (「はじめに」より)
著者:前野義博
縦:21.5×横:19 全頁数:136ページ
重量352g厚さ1cm
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