小学生で出会っておきたい55の言葉
小学生で出会っておきたい55の言葉
■問いかけという言語宇宙 ──保護者の方へ
本作は、2012年秋にリリースし、ご好評を頂いた『中学生で出会っておきたい71の言葉』『高校生で出会っておきたい73の言葉』のいわば妹分として企画された続編です。
企画段階では小学校1年生から読めて、頁を読み進めるごとに対象年齢が上がって6年生までが読めるような仕立てにしようという案も出ましたが、いざ書いてみると早熟な(笑)4年生ぐらいからが適当と思われるものになりました。
小学校時代というのは、自我は芽生えていてもそれはほとんど無意識に近いものです。
かたちの定まらないアメーバのような思いを、うまく、かっこいい言葉にできたらいいのに、と子ども時代の私はいつも思っていました。これは、状況を言葉によって整理できない、だから自分を伝えられないという本質的な子どものストレスと地続きです。
特に、核家族化が進み、読書体験にとぼしいと言われる最近の子どもたちには、心境を表現するのに手近な決まり文句だけを使う傾向も見られます。
とはいえ、子どもに美しい日本語の使い手になってほしいと言っている大人の会話の現場も似たような状況であることは否定できません。
また子どもというのは、すっきりしたわかりやすい答えが出ない状態に不安を抱く生き物ですが、この幼児性から解放されない大人がここのところふえているように思います。
複雑で先の見えない現代社会に生きる大人たちが、目先の安心という精神衛生を得るためにとる言動、「人生なんてこんなものだ」「そこそこがいちばん」等、それらが子どもの“言語原体験”となり、安易にあきらめたり、ごまかしたりといった風潮がその精神性に反映しているということは十分に考えられます。
子どもは問いかける生き物であり、問いは言葉で行うものです。すぐに答えの出ない、愛や美しさや善、生きることと死ぬことについての問いは、問いかけそれ自体が素晴らしい言語宇宙なのだということを私たち大人は知っておきたいものです。
ああかもしれないね、こうも考えられるよ、でもそっちもほんとうだよね、という親子の対話や考察の時間は、子どもにとって(もちろん大人にとっても)、日々の生活言語を豊かに鍛えてくれるにちがいありません。
そんなひとときに本書が寄り添い、先人のきらめくような言葉たちをためつすがめつ味わうことから、安易な結論に着地しない、尽きぬ会話の贅沢が生まれるとすれば、編者としてこんなにうれしいことはありません。
縦:25.7×横:18.2 全頁数:144ページ
重量296g厚さ1cm
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